異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「忘れたか? オレは、おまえを離さないと」

「……お、憶えてる……だけど、言ったでしょ。あたしの周りにいたら、またあんなことが起きるかもしれないって。
バルド、あたしは……あなたをあんな危険な目に遭わせたくない。
あなたは皇太子になるんでしょう。なら、大切な命を粗末にしちゃダメだよ」


そばにいたいとは伝えた気持ちは本当だった。許されるならずっとバルドの近くにいたい、あたしの心はそう望んでる。


だけど、でも。


あたしを狙う相手はあまりにも強大過ぎる。


セイレム王国を一晩で陥落寸前まで追い込む力があったんだ。今度本気で襲われたら、バルドもみんなも……そしてディアン帝国すらも、セイレム王国やセリス王子の二の舞になる可能性が高い。


あたしはバルドと契約して巫女の力を得たけど、まだその使い方もよくわからない。だから、いざというときに役に立つかどうかは微妙だし、未だ孵らない卵の雷焔の力をふるうのも怖い。


「あのね、バルド……やっぱり、あたしはあなたのそばにいない方が良いかもしれない。確実に相手をやっつけるまでは離れ……んむっ」


顎を掴まれたかと思うと、強引に振り向かされいきなりキスをされた。しかも、かなり大人なものを。


「む……っ!」


離して、と言いたくてバンバンとバルドの腕を叩いたけど、ますます拘束が強くなっていくだけ。


そのうち頭が真っ白になって、腰に力が入らなくなり全身が震える。くたりと力が抜けたあたしの身体を、バルドはがっちりと抱き上げた。


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