異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「ナゴム、ワタシ、マモルネ」
日本語はまだ単語しか話せないロゼッタさんだけど、この3日特訓したお陰で少しずつこちらの言うことも理解してくれるようになった。
「うん、よろしく」
あたしが頷けば、ロゼッタさんはニカッと笑いあたしの肩を叩いた。
「ナゴム、いい、ヒト。ワタシ、アンシン」
パンパン、と背中を叩かれたのは、たぶんロゼッタさんの弟くんのことへのお礼だと思う。
ロゼッタさんは18になるけど、13も年下の弟が病弱でめったに外に出なかったから、いろいろ日本の遊びを教えてあげた。石ころや地面や紐があればいくらでも楽しめるのが、アナログ的なお遊戯の利点。弟くんは大喜びで、表情も明るくなったしよく笑うようになった。
滞在のお礼にもならないけど、将来の部族長として期待された弟くんが、少しずつでも強くなればいいと思う。
「それじゃあ出発しましょうか」
セリス皇子に声をかけられ、コクりと頷く。セリス皇子とハルトはエークに乗り、あたしは怪我が治ったレヤーに乗せてもらってる。
部族特有の太鼓が響く出発の合図とともに、それぞれを乗せたものが脚を踏み出す。
(さよなら、またみんなに会えるといいな)
ほんのちょっぴりとだけ名残惜しい気持ちになりながら、しばらく手を振ってお別れを終えた。