異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
ポロリ、と涙がこぼれ落ちる。頬を伝う滴を、バルドは指先で拭った。
「ひとりで抱えようとするな」
「……バルド」
「おまえはすべてを自分のなかで完結させようとする。悪くはないが、もっと甘えかたを覚えろ」
わかっていてくれた。
バルドはいつの間にか、あたしのことをこんなにも理解していてくれたんだ。
あたしがすぐにぐるぐるとした思考の渦に巻き込まれること。誰かに頼る前に自分で何とかしようとするクセも。
「オレは、いい加減な気持ちでおまえを抱いてはいない」
「……バルド」
「おまえの一生も、子どもも、国も。すべてを背負う覚悟がなければ手を出さなかった」
バルドはあたしを抱きしめたまま、そっとあたしのお腹に手を当てる。
「おまえも、生まれて来る子どもも、何より大切だ。一生賭けて何からも護りとおす――だから、信じてオレに着いてこい。和」