異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
まるで、プロポーズみたいだなんて。あたしも大概ばかだ。
自分の都合のいいように解釈し過ぎてる。
だけど……でも。
「ほんとう……に? あたし……バルドのそばに……いていいの?」
「ああ、着いてこい、和。ひとりでは困難なことも、2人で力を合わせれば乗り越えられる」
バルドが手を差し伸べてきた。あたしが大好きな、厚い手。タコがたくさんあって、傷だらけ。決してきれいとはいえないけど。
……あたしは、この手が好き。
きっと、もっと、誰よりも。
まだ、ためらう気持ちはある。
あたしは異世界の人間だとか、身分差とか、がさつな人間だとか、胸が小さいとか、水瀬の巫女だからとか。他にもいろんな懸念がある。
だけど……
あたしはバルドへ手を伸ばしたけど、数回ためらって一旦引っ込めようとした。
でも。バルトの手がいきなり動いて、あたしの手をその大きな手のひらでギュッと握りしめたんだ。
「迷うな。オレは、おまえしか妃にしない」
「……バルド……」
「オレの、妃になれ和。義務でも役割でもなく……オレが必要だから、おまえを妃とするんだ」
「……はい」
あたしは、両手で顔を覆って頷くだけで精一杯だった。
必要な言葉はお互いにまだなかったけど。
きっと、これが不器用な2人の精一杯だったと思う。
初めて、本当に気持ちが通じあった涙味のキスは――今までになく、あたたかくてしあわせだった。