異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
第31関門~帰る場所。
セイレム王国を出立する日の朝、最後だからと国王夫妻やティオンバルト殿下とユズ夫妻もともに朝食を摂った。
「和が帰ってしまうなんて。本当に名残惜しいわ」
セリナは心底残念そうな顔であたしへ話しかけてきた。セリス王子がよみがえってから多忙で顔を合わせる機会がなかったんだよね。
「……うん。あたしももっといろんな話をセリナとしたかったな」
「あたしも! 和とセリナ王妃様ともっとお茶をしたかったです」
ユズが勢いよく片手を挙げたから、ティオンバルト殿下が苦笑いをして妻を注意してた。
「ユズ、もう少し落ち着かないとね。君だってもう母親になるんだから」
何だか聞き流せない言葉が含まれていて、突っ込んでいいかどうかわからなくてもだもだしていると、察したらしいセリナが先にユズに話しかけた。
「まあ、そのようにおっしゃっていただけて光栄ね。それと、不躾かもしれませんが……ティオンバルト殿下のご発言……もしかしたら、ユズさんがご懐妊なされたのですか?」
公的ではなくあくまでもプライベートな席だから、セリナも堅苦しさを抜きにしてストレートに訊ねてた。さすがに長年王妃を務めてるだけあって肝が座ってるな、と内心感心しきり。
セリナの言葉を聞いたユズは、急に頬を染めてもじもじしだした。