異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「その気持ちはわたくしもよくわかるわ。本当におめでとう。今から誕生が楽しみね」
セリナも改めてユズにお祝いを述べたから、あたしもちゃんとしなきゃね。
「おめでとう! ユズもこれでひと安心だね」
自分のお腹をそっと撫でる。ほぼ同時期に懐妊したからか、ユズの嬉しさは自分のことのように感じられて、心の底からお祝いを言えた。
「うん。セイレスティアにはティオンしか後継ぎがいないから……焦る気持ちはあったけど。ホントによかった」
「そっかぁ……そうだったね。それじゃあよけい不安があったんだ」
セイレスティア王国には三人の王子がいたけど、前の王太子である第一王子と第二王子はディアン帝国との戦争で亡くなった。異母弟のティオンバルト殿下が唯一の王位継承者である以上、彼が後継ぎを残すのは義務でもある。ユズにすれば相当なプレッシャーになったに違いない。
(まあ、あの熱愛ぶりからすれば近々そうなることは予想できたけどね)
水晶宮殿で行われた歓迎パーティーで、ティオンバルト殿下のすさまじい独占欲を見せつけられてましたから。ただセリス王子とちょっとお話しただけで、ユズはほとんどパーティー会場に居られなかったし。
「私としては少なくとも十人ほどの子どもが欲しいと考えていますから。これだけではまだまだ。ねえ、ユズ。これからも頑張ろうね」
みなさんの前と言うのに構わず妃の肩を抱き、耳元であまく何かをささやくのはお止めください。こっちの精神力がガリガリと削られていきますから。