異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「もう、どうしちゃったのさ。ずっとぼんやりしてるみたいだけど、体調でも悪いの?」

「え……あ、すみません。ちょっとだけ……ご心配をおかけしましたが、だいじょうぶです」


カイル王子がジッと探るような視線を向けてくるから、いたたまれない。


別に懐妊を隠したいわけじゃないけど、ユズが先に明かして勢いが削がれたというのもあるし、第一。あたしとバルドはまだ正式に結婚もしてないのに、先に懐妊なんてして。皇族にすればスキャンダルにしかならないような気がする。


カイル王子はちゃらんぽらんだけど、真実を見抜く目は持ってる気がする。だから、下手な言い訳はしたくないんだけど。懐妊を明かして良いか迷う。


それに。


(ミス·フレイルも言ってた。バルドの子どもは重要な皇位継承者になるって)


あたしがバルドの子どもを身籠ったことで、きっとディアン帝国の皇位継承争いに変化が生じる。


後継ぎがいる有能かつ実績をあげている長子ならば、誰もがそのひとに期待をするだろう。


後世に確実に血を残すのは、継承者としての重要な役割だから。


まだ自覚は全然ないけれど、自分もその政争に巻き込まれるんだ……って。ぼんやりと考えてた。


最悪な話、この子が邪魔になって排除される危険性もある。バルドが何も言わないのは、たぶんその辺りもわかってるからだ。


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