異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「ねえ、和さ。やっぱりそいつがいいの? さっきから全然喋らないし、そんな無愛想でちゃんと話できてるの?」
カイル王子がカトラリーであたしの隣にいるバルドを指すから、セリナがこら! と眉をひそめて注意をした。
「カイル、そんなふうに人を指しちゃいけませんって。ほんとうに、子どもの頃から変わらないのね」
「はい、すみません~ついついやってしまいました!」
ピシッと背筋を伸ばしたカイル王子は、即座にセリナに頭を下げる。そのやり取りはたぶん慣れたもので、ハロルド国王陛下も殊更咎めたりしなかった。
「あの、カイル王子。バルドとはきちんと話し合ってますから大丈夫です」
まだ恐縮して頭を下げ続けるカイル王子に、仕方なく声をかける。でないといつまでも動かなさそうだ。
「え、マジですか?」
ガバッと勢いよく顔を上げたカイル王子は、黙々と食事を取るバルドをジッと見る。
それにつられてか、他の視線もバルドに集まる。バルト自身は全く動じることなく綺麗な所作で食事を終えると、感謝の祈りを捧げてからポツリとひと言。
「和とは正式に愛をかわした――彼女は懐妊してる。来年夏にはオレの後継ぎが生まれるだろう」
「……………………」
一瞬、すべてがフリーズした。
そして……。
「えええええっ!?」
どこからともなく叫び声が上がり、阿鼻叫喚の地獄絵図と化した……こともなく。
ただ、ちょっとした混乱状態になったことは付け加えておきます。