異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。






「バルド、明かさないんじゃなかったの?」


ディアン帝国へ出発する前の最後の確認の最中、どうしても我慢できなくてバルドに訊いてみた。


「何をだ?」

「あたしの懐妊のこと。知られたらまずいんじゃない?……あたしを狙うヤツらにとか……皇位継承のこととか……あと、まだけ、結婚もしてないのに」


結婚のことを自分から言うのは催促しているみたいで恥ずかしかったけど、でもやっぱり順番が間違ってるのは確かだ。いくらあたしが男女のことに疎くたって、デキ婚が歓迎されないのは解る。


ましてや、バルドは皇太子確実と言われる第一皇子だ。正式に婚儀を挙げてない時の子どもが認められるかどうかすらわからないのに。


それに、黒衣の連中がいつこの事を知るかが気がかりだった。もしも連中の目的が水瀬の血だとしたら、この子が生まれたらあたしは不要になる。


いいえ、むしろ今より危険度は増すかもしれない。


水瀬の血を引くバルドの子どもだ。皇位継承権を持つその子を即位させれば、広大な土地と資源を持つディアン帝国を思うままにできる。それこそ、封印された古代兵器を公然と使用し、世界征服すらしてしまうかもしれない。


まだ皇帝陛下はご健在らしいし、皇位継承権を持つひとはたくさんいる。けど、ヤツらが本気になれば、おそらく根絶やしにすることは可能だ。


となれば……


来年の夏、この子が生まれたら。最大の危険が迫るってこと?


あたしは、そっとお腹を抱えて目を閉じる。


(嫌だ……せっかくバルドとの間に授かった赤ちゃんだもん。絶対に、渡さない! 何をしても)


知らず知らず、お腹の辺りで組んだ手に力がこもった。


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