異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
バルドはあたしをギリギリまで追い詰めてきたから、距離を取るために彼の腕から逃れようとした。
今、頭を冷やさないと。気が昂ったまま話せば、絶対に感情的になって喧嘩腰になってしまいそうだ。
懐妊がわかってからというもの、何だか情緒不安定で気分が急に変わる時がある。お医者様には妊娠による女性ホルモンのせいだとか言われたけど。ちょっとしたことで、感情的になりやすくなってる。
だから、バルドと物理的に距離を取って彼を客観的に見ないと、自分の主観だけで勝手な言葉をぶつけてしまう。あたしはバルドを信じたいのだから、一方的に責めることはしたくない。
ちゃんと、彼の言葉を聞かなきゃ。そのためにはあたしも冷静になる必要がある。
(落ち着いて……深呼吸をして……頭の中で数を数える。それでもダメなら好きな景色を思い浮かべて)
一瞬逃れられたと思ったのに、バルドは両腕であたしの身体を閉じ込める
せめてもの抵抗で顔をうつむかせたのに、彼はあたしの顎を掴み強引に顔を上げさせられた。
「……バルド……離して。あたしは冷静に話したいの」
「その必要はない」
バルドがきっぱりとそう断じたから、話し合う気持ちすらないのかと絶望的な気分になる。
けれど、バルドは予想外の言葉をあたしへ放り投げてきた。
「――好きに話せ。和、おまえは頭で考えすぎだ。もっとありのままの自分を晒して、オレにぶつけてこい」