異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
あたしは、ぱちぱちと目を瞬いて彼を見たけれど。バルドは真剣そのものの瞳であたしを見据えてる。
「バルド、何言って……」
「はぐらかすな」
何だか気まずくなって目を逸らそうとすると、バルドに顔を固定されて動かせない。ますます彼の黄金色が近づいて、呼吸がうまくできなくなる。
「言ったはずだ、もっと甘えろと。もっと、オレに言葉を聞かせろ。おまえが何を感じたか、何を思ったのか。結論や結果だけでなく、曖昧でいい加減なよくわからない感情も想いも、すべて吐き出せ」
「そんな、そんなの……できないよ!」
「なぜだ?」
鋭い声で詰問されて、あたしはただただ首を横に振る。ならば、とバルドは冷静そのものの顔でお腹に手を当てた。
「なら、この子どもはやつらへの供物にするか?」
その言葉を聞いた瞬間、あたしは衝動的にバルドの手を叩いてた。
「嫌だ! そんなの……絶対にさせない! この子は……あたしの子どもでもあるんだから。バルドの好きになんてさせない!!」
ぶわっと涙が流れたまま、お腹を庇うように抱えて精一杯バルドを睨み付けた。離れようともがいているのに、彼はますます距離を縮める。
「絶対、渡さない! あたしの赤ちゃん渡したりしないから!!」
「ああ」
「バルドにも、勝手にさせない。あたしは……ちゃんと生んで幸せにしてあげたいもん!」
「わかった」
「……あたしは、ちゃんとこの子に家族をあげたい。あたしみたいな独りぼっちになんてさせたくない!!」
最後に叫んだとき――バルドはあたしの頭をそっと抱えて、そうだなと呟いた。
「オレも、同じだ。子どもには親も家族も必要だ。だから、家族になれ和。オレと……おまえと、生まれる子どもと三人で」