異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
キュッ、とバルドの背中にすがるように抱きついた。目をつぶって彼の胸に顔を押し付けたまま、思うままに自分の想いを吐き出す。
「……こわい」
それが、一番感じていた感情だった。
「……赤ちゃん、できて嬉しい。幸せだけど……あたし……怖いんだ。だって……あたしもまだまだ子どもなのに……こんなあたしが母親になんてなれるのかな……って。だって……自分と同じ一人の人間を生んで育てなきゃいけないって……こんなにも未熟な人間なのに……できるかわかんないよ」
ぎゅ、ってバルドの服を指で握りしめる。微かに震えてるのは、たぶん本当の気持ちを紡いでるからだ。
「あたし……母親って言うものがよくわからない。お母さんと生きることに一生懸命で……お母さんは8歳で死んじゃったから……うまく母親できるか自信ない。それに……これから体がどんな風に変わっちゃうのか……わかんないから怖いよ。
あたし……何にも知識がないから、わからないことだらけで……妊娠中したらいけないことの区別もつかない。だから……ちゃんとお腹のなかで育ってくれるか不安だよ」
今でさえ、こんなにも体調は最悪で気分が悪いのに。これから来年の夏までずっと耐えなきゃいけない。皇位継承者を産むというとてつもないプレッシャーからも逃げたいって気持ちもあった。
バルドはお腹に配慮したまま、あたしをグッと抱きしめてくる。とんとん、と背中を労るように叩いてくれた。
「……そうだ、怖いのは当たり前だ。おまえは未知の領域で何もかもが初めての体験だ。無理もない」