異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
すごく、嬉しかった。
バルドがあたしと子どもを護ると言ってくれたことが。
だけど……
あたしの頭の中では、あの夜の出来事ががっちりと絡みついて離れない。
“あなたを護る”と初めて言ってくれた人は、あたしを庇って命を失った。
バルドを信じないわけじゃない。むしろ、誰よりも信じられると解ってる。
でも――だからこそ失いたくないんだ。
あたしはそんな想いを込めてバルドを見上げた。
「バルド……お願い。むちゃしないで。もしも本当にあたしを救うのが無理な時は……あなただけでも生き延びて」
本当は、何があっても一緒に生きたい。だけど、バルドはあたしと違って替えがきかない存在。もしも彼に万一のことがあったとしても、よみがえりの儀式は不可能だからそのまま命を落とすことになる。
(そんなの……耐えられない)
精一杯力を込めてバルドにしがみついていると、フッと小さく鼻で笑われた。
「ちょっ……バルド、もしかして笑った?」
ムカッときて彼を睨み付ければ、珍しく口元を緩めて笑ってましたよ。
「おまえが馬鹿なことを言うからな」
「馬鹿なことって……ひどい! あたしは真剣なんですけど……むぐ」
むに、とまたほっぺたをつままれた。痛いって言ってるのに!
「ありもしないことを想像して苦しむより、もっと楽しいことを考えろ。子どもにはどんな服を着せたいとか、どんな名前にするか。成長したらどこに連れていきたいとか、今から考えろ」