異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「そんなののんびりし過ぎじゃない?普通の夫婦みたいじゃない」
「普通で十分だろう」
そしてバルドはあたしの両方の頬を大きな手のひらで包み込むと、黄金色の瞳を近づけてくる。ドキッと心臓が跳ねて、彼の瞳を吸い込まれるように見た。
「いいか、オレは何があっても死なない。おまえたちを護るために生きようと足掻く。――だから、余計な心配をするよりも未来(さき)のことを考えろ」
最初、何を言われたのかわからずに目を瞬いた。だけど、不意打ちに軽くキスをされて再びささやかれ。ようやく頭の中に浸透していった。
“オレは死なない――おまえたちを護るために”
きっと、バルドが一番伝えたかったのはこれだったんだ。
たぶん、きっと。セリス王子への負い目やトラウマも解ってるからこそ、こうしてハッキリと言葉にして解らせてくれる。安心させてくれる。
そして、きっと。
バルドはこの約束を違えることはない。
あたしの中ではしっかりとした形でバルドの言葉が根付き、あたたかく照らしてくれる。
……あたしの帰る場所。それはきっとどこでもない。バルドのそばなんだ。
あたしのなかでストンとそう理解できた瞬間だった。