異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「ナゴム、ハラ、ヘッタカ?」
……………。
いや……満面の笑みでいきなり言うことがそれですか。
確かに、あたしは集落で出されるもの出されるものパクパク食べてましたけど。量は加減してましたし、他の人にちゃんと譲ってましたよ?
もしかしてロゼッタさんの中のあたしって、常になにかを食べてるイメージですかい!?
「い、いや。大丈夫、ダイジョブ! ノープロブレム!」
「ほんとかあ? おまえ、朝少ないってぼやいてただろ。そろそろハラが減るんじゃないか?」
「そりゃそう……って、違う! またあんたは、女の子に失礼なことを!」
レヤーで素早く横に張り付くと、ハルトに蹴りをお見舞いしてあげた。防具が隠してない弱点にクリティカルヒット!
「あだだっ! 脛を蹴るな。マジで暴力女だよな」
「よけいな口をきかなきゃ、あたしだって何もしないよ……」
ふん、っとそっぽを向いたあたしなんだけど。
ぶぎゅるるる~~……
怪物の唸り声のような、不気味な音が響いた。
……あたしのお腹から。
「………」
「………」
ハルトとお互いに無言で目を合わせてから、どちらともなく目をそらす。
(あああ……あたしってば、なんてドジ!なんでよりによって今、お腹が鳴るのさ!)
頭を抱えそうになっていると、すぐ隣へやって来たロゼッタさんが、あたしに小さな焼き菓子をくれた。木の実を砕いて蜜で絡めた、貴重なお菓子だった。
「ナゴム、タベテ! クウフク、ヨクナイ。チカラ、ナイナイ」
「う、うん……ありがとう」
ロゼッタさんの思いやりを無駄にしたくなくて、ちょっぴりずつかじる。素朴な甘みと優しさがほろりと口の中と身体中に広がった。