異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「なごむ、だいじょうぶか? 気分悪い?」
「あ、だ、大丈夫。平気……ちょっと妄想しただけだから」
いや、妄想ってヤバいし大丈夫じゃないだろ、ってセルフツッコミは虚しいのでやめておいた。
『体調が本当にお悪いのであればすぐにおっしゃってください。大切なお身体なのですから』
ミス·フレイルだけはストラストス語であたしに話しかけてくる。変わらないなあ、と苦笑いをしていると、アイカさんが扇を広げてまあ、と微笑んだ。
「やはり、ご懐妊の噂は本当でしたのね。おめでとうございます、心よりお祝い申し上げますわ」
「……ありがとうございます」
花がほころぶような笑みで嫌味なくお祝いを言われたら、そう答えるしかない。彼女が何のつもりで同行を申し出たのかわからないから、警戒を解かずにその顔をジッと注視してみた。
「ようやくバルド殿下も後継ぎを得られますのね。わたくしも幼なじみとして嬉しゅうございます」
「……そういえば、公爵夫人は経験がおありとおっしゃいましたよね?」
以前、何の偶然かアイカさんの内心が聞こえたような気がする。その時はバルドが自分の子どもでないと知っていてプロポーズしてくれただとか聞いたけど。
「はい。長男のフローレンスですわね。今年8つになりますが、まだ甘えん坊で困りますわ」
8つ……か。アイカさんはバルドと同い年だから、あたしとそう変わらない年で生んだんだ。
ちょっとだけ、彼女を間近に感じた。