異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「初めてのご懐妊で不安でしょうが、何でもご相談くださいね。わたくしのできることでしたらご協力させていただきますわ」


アイカさんはあたしの左手を取ると、両手で包み込んできた。手袋をしているから直にではないけれど、その小ささや柔らかさは到底あたしには真似できそうもない。


華奢なのに豊かな胸も……って。自虐ネタはやめておこう。落ち込むだけだ。


「ありがとうございます。その時はよろしくお願いします」


あまり彼女に頼るつもりもないけれど、その申し出はありがたい。彼女が経験者というのは本当だし、ミス·フレイルやロゼッタさんはお子さんがいないから、相談できる人が間近に欲しいというのが本音なんだよね。


もちろん、彼女が純粋な意味で申し出たのだとは考えてない。セイレム王国での態度から、なにか裏がある可能性は否定できないし。


でも、バルドの幼なじみで親友の奥様方。公爵夫人という宮廷の中ではかなり重要な人物だし、今あたしが勝手な憶測だけで嫌ったり遠ざけるのも不自然な話。


バルドが無事に皇太子となるためには、たぶんハルバード公爵の支援も必要だ。なら、無下に扱えない。


アイカさんが何をしたいかわからない以上、監視の意味でも彼女の近くにいた方がいいのかもしれないし。バルドが恋した女性がどんなひとなのか興味もあった。

< 613 / 877 >

この作品をシェア

pagetop