異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
(それにしても)
アイカさんがわからない。彼女はどういうつもりで男性をはべらせ、あたしに近づこうとするんだろう?
セイレム王国には静養に訪れていたという体の弱さがあったとしても、夫と子どもがいる公爵夫人としての立場にふさわしい振る舞いとは思えない。
なんだか、体の弱さやか弱さを武器に逆ハーレムを作りたいだけだったような気が。少女マンガのヒロインみたいに。
(……って発想は日本の女子高生だからかな)
でも、以前アイカさんを見たヒスイが言ってた。
彼女は日本人の血を引いている……って。
水瀬の巫女であるあたしや、秋人おじさんの末裔であるディアン帝国皇族や、25年前にやって来たセリナとはまた違う日本人の子孫ということ?
(でも、そういえばヒスイが話してた……この世界にはたびたび日本人が来ていたから、道ができていたんだって)
そこで不意に思い出したのが、バルドと旅をしていた時に見つけた、封じられていた手紙のこと。
あの時、なぜかヒスイはあれをあたしに取りに行かせた。考えてみれば、あたしが手にする理由なんてこれっぽっちもなかったのに。必要だからと言われたし、燃えそうだったから焦ってつい手にしたけど。
手紙が無事だったとわかった瞬間に見せた、ヒスイが安堵した顔が忘れられない。あんな愁傷な表情は一度きりだったし。
バルドはあの手紙をもとにその後の行動を決めていたけれど、一体何が書かれていたんだろう?