異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



異国のこんな場所で訊いていいものか、って配慮もある。


だけど、盗聴の危険はない。方法は知らないけど、この部屋には遮断の術がかけられているみたいだから。


「あのね……ディアンって……セイレムやセイレスティアと国境を巡って戦争をしてたじゃない。もしかすると……バルドも、戦ったりしたの?」


あからさまに関わったとは言えずに曖昧な訊き方になってしまった。


もしも、バルドが自ら進んで戦争を仕掛けていたら……?


想像しただけで、心臓が嫌な音を立てる。バルドを信じたいけど……もしも彼が、セイレスティアの……ユズの夫である王太子殿下の兄達をその手にかけていたら。


(……どうしよう……そうしたらあたし……ユズとは二度と顔を合わせられない)


バルドのことだから、誰かの命を奪うならやむにやまれぬ事情があるのだと思う。でも……。きっと複雑な気持ちになる。


ぐるぐるととりとめもないことを考えていると、両腕を組んだバルドは小さく息を吐いた。


ピクリ、と肩が跳ねる。


「……何を考えているかと思えば、それか」

「だ、だって……この街も被害があったと聞いて気が引けるじゃない」


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