異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「オレは自分から関わってなどいないが、軍部の暴走を止められなかった。ならば同じくらいの責任はある」
バルドの鋭い眼差しが僅かに翳り、悔恨の色が浮かぶ。責任感が強い彼だから、きっと身を切るような思いをしたんだろう。
「……数年前のセイレスティアとの国境戦争。オレは皇子としてあまり力がなかったゆえに、皇帝の勅命で始まった戦争を止められず、終結まで双方に甚大な被害をもたらしてしまった」
初めて、耳にした。バルドの弱音にも似た後悔を。
「……だから、オレは……あの時決めた。必ず誰もが納得する人間となって……力を手にいれると。同じ悲劇は繰り返させないと」
ぎり、と音が立ちそうなほどにきつく拳を握りしめてる。日に焼けた指が真っ白になるくらいに。
なんだか、バルドが心の中で血の涙を流しているように思えて。
あたしは、そっと彼の手に自分の手のひらを重ねた。
「……だいじょうぶ、バルドはきっとやれる。夢を叶えられるよ。
だけど……あたしも……その夢を手伝いたい。あなたの隣で……いいかな?」
ちょっと図々しいかな、と思いながら、控えめに笑ってみせた。
すると、バルドに手首を掴まれたかと思うと、グイッと引き寄せられる。
そして、あっという間に彼の腕の中に包まれていた。