異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「バルド……?」


どうしたの? って意味で名前を呼んでも、バルドは何も言わずにあたしを抱きしめてくる。


少しだけためらいながら、彼の背中に両手を回してこちらも抱きしめる。大丈夫だから、って伝えたくて、広い背中をとんとんと叩いた。


不安で……仕方なかったのかな? 常に緊張を強いられるバルドが、初めてあたしに弱音を晒してくれた。


それはあたしにとって、驚きとともに喜びを感じさせる小さな出来事。


何があっても動揺なんてしないバルドでも、やっぱり人並みに弱さがあって。決して見せて来なかった部分を、あたしには見せてくれた。それはとりもなおさず、あたしに気を許していてくれる証なんだ。


愛しい、と強く思う。


このひとを、護りたい。このひとを幸せにしたい……幸せになって欲しい。そんな強い欲求に突き動かされ、彼の頭も抱えるように撫でた。


こしが強く癖のある手触りの髪の毛は、当然あたしとは違う。あたしはどちらかと言えば細くてさらさらした髪質だから、太くてごわごわしたバルドとは正反対。


ふと、生まれる子どもはどちらに似るんだろう? って考える。


不思議だな……


決して結ばれることがなかったひととこうして子どもまでできるなんて。


男の子でも、女の子でも構わない。きっとバルドはどちらでも構わず愛してくれる――そんな確信があった。


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