異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「……本当は、素晴らしい人なんだね。それなのに……変わっちゃったのはつらいよね」
「……ああ」
バルドはあたしを抱きしめる腕に力を込める。だいじょうぶ、って意味でポンポンと彼の背中を叩いた。
「バルド、あたしね。お母様と仲良くなりたい。お母様が変わっちゃったのはきっと寂しくて悔しくて辛かったからだと思う。同じ女性として……頑なになった気持ちを解してあげられたらなって思うけど。まずは、少しでも親しくなりたい」
無謀かもしれないけど、何事もチャレンジあるのみ。何もしないで文句を言うより、自分で変えていった方がましなはず。
バルドは僅かに目を細めてあたしを見る。無謀なこと言うなってこと?
「母上はお気に入り数名しかそばに置かず、衝立の奥に引っ込んで姿を見せない。初対面の人間はまず目通りすら叶わないだろう。オレも直に言葉を交わしたのは3年前で、お姿を見たのは10年前が最後だ」
「そんなに!?」
バルドの話には驚くしかない。実の親子なのに、10年も直接会ってないなんて。 言葉を交わしたのも3年前って。
皇族とはいえ、あり得ないよね!?
いくらなんでも不自然だし、どうして息子をそんなに避けるかわからない。バルドのような優秀な皇子なら、自慢に思うならともかく。なんでそんなに疎遠になる必要があるの?
あたしはちょっと違和感を感じて考え込んだ。
(昔は普通に仲がよかったのに、いくら夫の寵愛が移ったからといって息子まで疎ましく思うものなのかな?)