異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
あたしはレヤーの首をがっちりと掴んで力の限り揺さぶった。
「ちょ、ちょっと。 それが解ってたなら、なんで早く言わないのよ! 心構えとかそれなりの準備ってのがあるでしょが」
「いだだだだ! く、首を絞めないでください~!
だ、だって……和さん、前もってお教えしても。怯まない自信はありましたか!?」
「そ、そんなの。聞かないとわかんないでしょ! あたしも当事者なんだから、知る権利はあるはず」
「ぐ……ぐる゛じい゛……」
ギリギリと音が立つまでレヤーの体を絞めていると、シッとセリス皇子が人差し指を唇に当てる。なに? と彼を見ていると、首を左右に振ってる。どうやら、黙れってことらしい。
ちらっとロゼッタさんとハルトの様子を見てみたら、2人ともなにかを感じたらしく、腰に下げた武器を手にしようとして油断なく辺りを見渡していた。
周りを緊張感が満たしていく。移動のための音以外はおそろしい位に静かで、左右にある丘陵を吹き抜ける風がやたらに強くなってきた。
「……おい」
「な、なによ?」
そんな中でハルトが話しかけてきても、素直に応じられない自分が嫌だった。
「オレが合図したら、あの灌木の間を駆け抜けて渓谷へ逃げ込め」
「は?」
一瞬、何を言われたのかわからなかった。