異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
バルドがアイカさんとは距離を取れない理由がわかった。
お母様とコミュニケーションを取るには、ハルバード公爵夫妻を介する必要があるからなんだ。
3人は幼なじみだから、バルドのお母様もよく知ってるんだろう。
(だけど、実の息子より赤の他人を選ぶなんて。いくらなんでもひどいよね)
話を聞く限りは幼い頃はごく普通に仲がよい親子だったのだから、なおさらバルドにはショックが大きかったに違いない。
「ねえ、バルド。つらいかもしれないけど、聞かせて。お母様は突然顔を見せなくなったの? それとも徐々に遠ざけられた?」
「別に、構わん……母上が離れたのはゆっくりと、だな」
「いきなりじゃないんだ……」
あたしはううむと腕を組んで考えた。
どんなに理性的な人だって、理性を失うほど感情が爆発する時もある。全てが嫌になって、切り捨てたくなる時も。
だけど、そのボルテージを持続するのは難しい。
ちょっと頭が冷えれば、なんてバカなことをしたんだろうって後悔する。
バルドのお母様の場合は、どうもそうじゃないっぽい。感情的になって爆発して一気にガーッとなったんじゃなく、ゆっくりだけど確実に息子を切り離した。
これは、冷静にならないとできないことだ。怒りで頭が真っ白になってる状態ではとてもできない。