異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「バルド、もう一つ訊いていい?」

「なんだ?」


バルドはあたしをがっちり抱きしめて離さない。


いや……別にいいんですけどね。それだけならば。

ソファに腰掛けるバルドは、あたしを自分の膝の上に……座らせましたよ。


背中がぴったりと密着したまま、あたしの肩に顎を乗せてます。両手を腰に回してしっかりとホールドされてますから、身動ぎもできやしませぬ。


「アイカさんとお母様はもとからそんなに仲よくしていたの?」

「……アイカと、か」


バルドがフッと息を吐いたけど、うなじにかかるからこそばゆいんですけど。


「アイカと母上はそれほどでもなかった。母上はオレを鍛えることに心血を注いでらしたから、オレの幼なじみとはいえアイカやセオドアは特に可愛がってはいなかった……だが」


一度、言葉を切ったバルドは声色を変えた。


「オレと離れてからだ、アイカと母上が仲を深めたのは。セオドアと結婚できる身分になかったアイカが公爵夫人になれたのも、母上の強い後押しがあったからだ」

「……そんなにお母様はアイカさんと仲がいいの?」

「今や実の娘以上にアイカを可愛がっている。催し物があればアイカを同伴するほどだし、アイカとセオドアの一人息子も孫のよう溺愛しているな」

「…………」


バルドは何の感情もなく淡々と話してるけど、本当は平気ではないんだよね?


どうにかして2人を和解させたいと思う。


だけど、あたしは気になることがあった。


それは、お母様がアイカさんと近づいて傍若無人に振る舞うようになり、ディアン帝国が好戦的になった時期が一致すること。


考えたくはないけど、悪い影響が与えられたとしか思えなかった。


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