異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
ところが。
グイッと肩を掴まれた次の瞬間、唐突にソファの上に座らされてた。
はて? と首をひねっていると、バルドがハルバード公爵と相対してました。
「体調が悪いなら早めに休め」
バルドはそんなふうに言ってたけども、あたしを助けたんだなってわかったのはしばらくして。
「ハルバード公爵、挨拶だけならばもう下がってよい」
「そんなにすげなくせずとも。僕と君の仲じゃないか、バルド」
あっけらかんと笑う公爵だけど、少しだけ離れたあたしでもわかった――公爵の瞳の奥は一切笑ってないって。
(……一見フレンドリーだけど……なんだろう? なにか仄暗いものを感じる)
あたしがジッとハルバード公爵を観察していると、突然目の前いっぱいに緑色が広がって心臓が止まるかと思った。
《ふむ、どうやら大丈夫そうじゃな》
久々に聞いたヒスイの声にハッと我に返って、慌てて彼女に食ってかかった。
「ちょっと、いつも言ってるでしょ! 突然出てくるなって。それに今は……」
《ハルバード公爵とやらの挨拶中なのじゃろ。わらわとて状況くらい把握しておるわ》
ヒスイはそれだけ言うと、ふわんと飛んでハルバード公爵の前に降り立つ。しばらく眺めた後に、《ふむ》と口の端を上げた。
え、何ですかヒスイのその含み笑いは。楽しいおもちゃを見つけた子どもみたいなあれ。