異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「なかなか面白いことをおっしゃる」
フフ、とハルバード公爵が笑いましたけど。それが例の、目の奥が笑ってない笑顔なんですけど。
《さて。面白いのはともかく、わらわは真実を述べたまでじゃ》
ヒスイがのんびりとした口調でおっしゃいますけど……なんでしょう? 肌が粟立つような、首筋がチリチリと焼けそうな。冷たい殺気がそこはかとなく2人の間に漂ってませんかね?
何も知らない一般人が迷いこんだら、永久凍土化しそうなくらいには。
ツンドラ地帯と化してもバルドにフォローするつもりは無さげだし。口元がひきつるのを自覚しながら、その場を収めようと何とか言葉をひねり出す。
「ハルバード公爵、この度はお迎えありがとうございます。夫人にもずいぶんと助けていただきました。感謝します」
「我が妻は至らぬ点ばかりでしょうが、どうか今後ともお目にかけていただければ幸いでございます」
お互いに堅苦しい挨拶をしている最中、ヒスイは欠伸をしてやれやれと自分の肩を叩く。
《つまらぬのう。人とは腹の中と真逆のことを吐かねばならぬとはな》
「ヒスイ、茶化すなら出ていって」
《そうか? わらわがおらねば、まずいではないか? 何せこやつは――》
ヒスイが話している最中、目の前でキラリと輝いたものがあった。
それは、白刃。
細身の剣が、ヒスイの身体を貫通してた。