異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
第33関門~帝都、バラサンで。
「うわぁ……」
丘の上から帝都を眺めたあたしは、思わず感嘆の声を上げた。
ディアン帝国と他国を隔てるヒュレネー山脈は、3000から4000m級の高峰が連なる大陸の絶壁と呼ばれる山脈。
この高い山々が隔てているのは、何も土地だけじゃない。気象に関しても別の気候になるほどの影響を及ぼしてる。
大陸を南北に走るヒュレネー山脈は東側を温暖な気候に、そして西側は乾燥した気候にと分けた。西の海で発生する雨雲はヒュレネー山脈にぶつかり東側に雨を降らせた後、高温で乾いた温風となり西側へ吹き込む。
つまり、典型的なフェーン現象。そのために、西の降雨はごくわずかなものらしい。
だからかもしれない。
秋人おじさんがディアン帝国の帝都を遷都(せんと)した時に、海沿いの町を選んだのは。 きっと、日本人として海が忘れてられなかったんだ。
まだ遠くからしか見えないけど、高い場所から見下ろすディアン帝国の中心部は、どこか懐かしい気持ちになる。
皇帝陛下のまします高い棟を中心に、きっちりと区画整理がなされてる。あちこちに緑が植えられ、舗装された道を車らしき乗り物が走ってる。
建物は大概クリーム色かグレーで、たぶんコンクリートや漆喰で作られているっぽい。
つまり、現代日本とそう変わらない景色が広がっていたんだ。