異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
《ほほう、あれが帝都というものか。初めて見るのう》
「そうですねぇ。何だか古きよき時代の日本を思い出します」
《わらわも代々の巫女を見てきたが、帝都へ向かったのは和が初めてじゃからの。どんなものか実に興味深い》
「和さんからの情報では、どうやら激辛のカレー屋さんがあるみたいですよ。カレーは久しぶりですから楽しみですねえ」
あたしのすぐ隣では、ヒスイとレヤーのそんなほのぼのとした会話がかわされてる。聞いてるだけなら特に問題はないし、危険な長旅の末にやっと最終目的地へたどり着いたから、気が抜けるのも解る。
わかるけど……
あたしはくわっと目を見開いてから、ビシッとヒスイを指さした。
「ちょっと、ヒスイ。あなたホントに大丈夫なの!? お腹に剣が刺さったままなんですけど!」
《気にするでない。わらわの体は人間どもとは違う。何の影響もないぞ》
「いや、あんたは蚊に刺されたほどでなくても、見た目がコワいんですけど。お腹のど真ん中を剣が刺さったまま平然と動き回るって、何のホラーよ!? 子どもが見たら確実に泣く上に、軽くトラウマになるレベルなんですけど!」
サラリとヒスイは返してくれましたが……
あたしは、口元をひきつらせながら彼女に食って掛かりましたよ。
だって……
ヒスイの体のど真ん中に、ハルバード公爵に突き立てられた剣が丸々貫通しているんですよ?
見た目からしてヤバすぎるでしょ!