異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
《気にするなというに。それより、気を昂らせるのは赤子によくないではないか?》
車の中でそんなふうにおっしゃるヒスイですが、せめてお腹の剣は引っ込めてください。
「あんたのせいでしょうが……」
あたしはぶつぶつと独り言に近い文句を言いながら、窓の外の景色を眺める。
山脈を越える時は特別なトンネルを使い、予想外に時間を掛けずに通り抜けることが出来た。その際に乗ったのは全自動の乗り物で、既に科学技術の片鱗に触れることができた。
そして、今あたし達が乗っているのは多少浮かぶことが出来る全自動走行車。どんな原理か知らないけど、車体が数十センチ浮かびながら走ることができるから、大概の悪路は気にすることなく通れる。
浮かぶ車体は揺れるかなと心配になったけど、それは全くの杞憂でした。むしろ普通の自動車より揺れがなくて快適で、気分の悪さは問題なく過ごせる。
そして山脈を越えてからおおよそ二時間の後――帝都へ通じる道へ到着した。
そして、そこからまた乗り物を替える。バルドが久しぶりで帝都へやって来たものだから、民の歓迎ぶりが凄かった。