異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
バルドの護衛にはハルバード公爵がシレッとした顔で就いてた。帝都からの護衛責任者として、ついでに妻を迎えに来たらしいけど。
(にしても……ハルバード公爵は何を考えてるのかさっぱり分かんないな)
あの時。
国境の街で初めてハルバード公爵に会い挨拶を受けた際、ヒスイが出張ってめちゃくちゃになった。
で、ヒスイはハルバード公爵に関していろいろ教えてくれたけど。言い当てられたのが癪に触ったのか、ハルバード公爵はヒスイを刺したんです――しかも、満面の笑顔で。
『あ、失礼。手が滑りました』
……って。
いやいや、どこをどう滑ったら剣が相手を刺すんですか! しかも刃が身体を貫通してるし。遠慮なんて一欠片もないですよね!?
ヒスイもヒスイで冷ややかな笑みを浮かべて。
《ほう、わらわを挑発するつもりか。面白い。せいぜい好きに足掻くがよいぞ》
『ええ、私はあなたが気に入りませんね。言われずともお好きにさせていただきますよ』
フフフ、と互いに薄笑いと冷笑がぶつかりあい、その場の何もかもが凍りつきそうなブリザードが吹き荒れてましたな。
よく生きて帰れたわあたしは……。
ちなみに、その場にはバルドもいたけど完全にスルー。すがすがしいまでに我関せずを貫いてた。
ただ……。
『好きにしろ。ただし、オレ達や民の障害となるならば、問答無用で排除する』
それだけを、地に響きそうな声音でおっしゃいました。