異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
身体が隙間なく密着してたから、だと思う。バルドの身体が一瞬だけ強張ったのが判ったのは。
本当に微かな変化だったから、離れていたらきっとわからなかった。
「……バルド?」
不思議に思って彼を見上げると、その眼光が鋭さを増してた。不機嫌になったというよりも、何かに緊張するとも違う。あえて言うなら、何かに身構えているような。そんな感じがした。
ただ一点、前だけを見据えたバルドがあたしの呼びかけに口を開く。
「母上がいらっしゃる」
「!」
思わず息を飲んで前を見ようとしたけど、すぐ彼に止められた。
「動揺を見せるな。そのまま愛想笑いしておけ。母上には何もさせない」
気持ちバルドの腕に力がこもり、少しだけ強く抱きしめてくれる。護ってくれるという安堵感もいいけど、あたしはそれだけじゃ駄目だと一度下げた顔をまた上げた。
「……平気。あたしは大丈夫だよ。バルドこそ、あたしが護ってあげるから安心していいよ」
ニコッと笑ってみせる。
バルドからすれば、ただの強がりかもしれない。
だけど、あたしは伝えたかった。あなたはもう一人でないってことを。
もう、独りで戦う必要はないんだって。
「あまり頼りにならないかもしれないけど、あたしも頑張るから。2人……ううん、3人で頑張ろうね!」