異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



ぶおおん……と耳に微かな音が聞こえてきたのとほぼ同時に、何故か辺りが暗くなる。


え、なんで? 日が暮れるには早いし、ましてや雲るなんてもっとあり得ない……そう考えてのんびり空を見上げて、瞬時に後悔した。


空が、黒くなってる。


ううん、違う。正式には、銀色に光る虫が大量に空を覆っていたから、日が陰って暗くなったんだ!


メタリックな外見のロボット虫は、一つ一つが小さくても何せ数が多い。数えるのも億劫になるほどの大群が、こちらへ向かって急降下してきてるっ!


「やはり、バグを使ってきましたか……バルト!」


セリス皇子が叫んだと同時に、彼の手にした銀色のスティックから緑色の光が放たれる。それが空へ向かって上昇すると、あたしたちの頭上数mの辺りで膜を張るように広がっていく。


銀色のバグと呼ばれた虫ロボットはその膜に触れると、たちまち火花を散らして動きを停めていく。中にはバラバラになってしまうものもあった。


「す、すごい……」

「おい、何をボケッとしてる! 早く行け!」


ぼんやりと眺めてる場合じゃなかった。ハルトが声を張り上げると同時に、左右から黒装束の刺客が襲いかかってきたんだ。


しかも、10人ずつはいそうで。あたし一人じゃとても相手にしきれない。

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