異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
ギイン、と派手な金属音が響き渡る。
前屈みの姿勢で顔だけ上げれば、目の前を舞ったのが長い黒髪。
あたしの身体を抱えたバルドがエークを下げて、やっと何が起きたかを理解する。
あたしの護衛であるロゼッタさんが、アスカ妃の半月刀の一撃を斧で受け止めたのだと。
凱旋パレードの最中も彼女は着かず離れずで護衛をしていてくれたけど、あたしの無茶な行動を見かねて飛び出してくれたんだ。
また迷惑をかけてしまったと申し訳なく思うと同時に、何があっても護ってくれる真摯な姿に胸が打たれた。
とはいえ、正式な騎士や貴族ですらない彼女が護衛のためとは言っても、皇妃に刃を向けたとあってはただではすまない。これ以上はまずい、とあたしはロゼッタさんに呼びかけた。
「ロゼッタさん、あたしは大丈夫ですから。もう下がっていてください。こうなったのもあたしの責任です。後はあたしが何とかしますから」
バルドをスルーするアスカ妃にあたしが意地になってただけだ。あたしのつまらないお節介のせいで、アスカ妃の機嫌を損ねてしまったなら。あたしが責任を持って何とかしなきゃならない。
だけど、ロゼッタさんはあたしの言葉に怒鳴り返してきた。
「そんなの、関係ない! 自分の息子やその嫁に刃を向けるなど、人じゃない。だから、わたしはあんたが嫌いだ!!」
前半はたぶんあたしを含むまわりに向けて。後半はアスカ妃に向けてロゼッタさんは怒鳴った。