異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



(どうにかして2人を止めなきゃ……でも、どうやって?)


これ以上2人を戦わせたくないのに、方法がわからない。

もしも自分だけならば身を投げ出す方法もあるけれど、お腹にバルドとの赤ちゃんがいる以上は勝手にその命を亡くせない。


(さっきはとっさだったからつい反射的にバルドを庇ったけど……身勝手だったかな)


アスカ妃の攻撃をロゼッタさんが防いでくれなかったら、どうなっていたんだろう。きっとバルドが動いていたに違いないけど、そんなのあたしは望まなかった。


けど……あたしはもう一人の身体じゃない。バルドにもらえた新しい命をこの世界に送り出す使命があるんだ。


そこまで考えて、ひとつの可能性が閃いた。


(まさか……)


あたしは視線だけでバルドを見上げる。彼は獲物を狙うような、猛禽類そのものの光で母親と対峙している。


一見、何の考えもなしの怒りに身を任せた戦いに見える。


だけど、きっと。バルドはなにか考えがあってこの行動を取ったんだ。彼が今までしてきたことは知らず知らずのうちに、予想外の。そして、納得がいく結果ばかり生み出してきたから。


だって……


あたしは、懐妊したことで無茶をしようと思わなくなった。いつもだったらあっさりと動いた場面で歯止めが効くようになってる。


もしかすると、懐妊させた時のバルドの意図のひとつだったのかもしれない。


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