異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「……すごい」
《ようやく巫女としての力を使えるようになってきたな》
ふわり、とヒスイが目の前に現れる。彼女はニヤリと口の端を上げて笑った。
《久しいの、アスカ。年齢を顧みずずいぶん派手に飾りたてるようになったものじゃ》
ヒスイが肩越しに言葉を放ったのは、他ならぬアスカ妃にで。声を掛けられた彼女はヒスイに向けて不敵に笑んだ。
「その歯に衣着せぬ物言い。そなたも相変わらずのようだな」
《そなたほどではあるまいて。わらわは身の程はわきまえておるぞ? 40過ぎでヘソだしするような恥知らずではないだけじゃ》
「ふふふ、心地いいものじゃ。そのように好き勝手な物言いは。誰も彼もが妾を腫れ物の様に扱うからの。張り合いがなく、つまらぬことばかりだ」
《奇遇であるな。わらわもじゃ。だが、他人を貶めたり陥れたりはせぬぞ。そのようなねじ曲がった根性では何も楽しくなかろうて》
(散々振り回しかき回してきたあんたが、どの口で言う!?)
ヒスイがシレッとアスカ妃の所行を非難してたけど。あたしはあんたにこそ声を大にして言いたいんですが! なんてツッコミはともかく。
アスカ妃とヒスイが顔見知りだったなんて初耳だ。いったいどんな繋がりがあったんだろう?
アスカ妃がちらっとこちらへ目を向ける。突然のことだから、ガチッと固まったあたしを見てふ、と鼻を鳴らした。
「……なるほど。そなたが当代の巫女か」