異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「ナゴム、イクヨ!」
「う、うん!」
ロゼッタさんに促されてうなずいたけど、こんな状況でセリス皇子とハルトを置いて行くのは心配だ。でも、多少腕が立つ程度のあたしがいても足手まといになるだけだ。ギュッと唇を噛みながら、一度だけ後ろを振り向く。
「どうか、無事でいてください!」
「おう、任せろ!」
「ご心配ありがとうございます。必ずあなたのもとへ戻りますから」
2人それぞれの返事を受け取ったあたしは、断腸の思いでその場を後にしてレヤーを駆った。
「和さん、飛ばしますからしっかり掴まっていてください! バースト!!」
レヤーの言葉に承諾する間もなく、彼が術を発動させる。レヤーの全身が淡く輝くと、蒼い炎があたしとレヤーを包み込む。
あたしは既に教えてもらっていたけど、防御を兼ねた攻撃系の魔法。触れたら最後、どんな材質であろうが人工的なものは全て燃やされるという。だから、武器や兵器を使った攻撃は全て無効化できるみたい。
レヤーはそのままロゼッタさんにもその防御魔法をかける。彼が術を連続して使えるのは二度までだから、ひとまずそれで終わり。ロゼッタさんとともに、渓谷目指しひたすら走った。