異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
『よろしいですか、和様。将来の義理のお父上とはいえ、最高の地位にあたられる御方にお会いするのです。粗相がないよう十分にお気をつけなさいませ』
支度をしている最中であろうと、侍女長のミス·フレイルは安定の厳しさでした。
一応ディアン帝国にも民族衣装はあるけれども、公的には近代日本の洋装に準じた服装みたいだ。洋装に馴染んでる現代日本人としてはその方がありがたいです。日本人も今や着物なんて特別な時にしか身に付けないもんね。
用意されたのは淡い水色のドレスで、羽のように軽い繊細なレース生地が蝶の羽根みたいにひらひらと舞う。それがノースリーブの袖口とスカートにあしらわれてて、ずいぶんとかわいらしい印象。
髪飾りは水鳥をモチーフにした銀でできた簪。まだ短い髪のアレンジのバリエーションは少ないけれど、ミス·フレイルは何とかアップに結い上げてくれた上に編み込みまで。さすが侍女のお手本と言われるだけありますな。
懐妊によるホルモンバランスの崩れで肌の調子も悪いから、薄化粧もやめてメイクは最低限のものだけ。いい加減に慣れないといけないけれど、メイク作業だけはどうしても違和感があるんだよね。
ミス·フレイルに先導されて部屋を出ると、迎えに来たらしいバルドが正式な皇子の姿でドキッと心臓が跳ねる。詰襟の軍服を着たバルドはやっぱり誰よりもカッコイイ。何だか恥ずかしくて彼がまともに見れない。
思わずうつむいたあたしだけど、いつの間にかバルドに手を取られてた。