異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
ゆっくりと視線を上げると、大丈夫だ、って。少しだけ柔らかな黄金の瞳が励ましてくれているみたいに感じた。
“オレがいる”
“うん、ありがとう”
何も言わないままに頷いたあたしに、バルドは僅かに目を細めて前を向く。彼に手を取られたまま、皇帝陛下のいらっしゃる部屋へと歩いた。
やっぱり帝国の長子だけあってか、バルドに着く臣下や護衛や警備の数が今までと段違いで驚いた。侍従長であるリヒトさんはもちろん、侍女や近衛やたくさんの人間が回りを固めてる。
廊下の間の左右には微動だにしない近衛兵が一定間隔で配置されてるし、何か息詰まりそうですよ。
ふかふかの緋色のカーペットをどれだけ歩いた後だったろう。いい加減に足が疲れてヒールに悲鳴を上げ始めたころ、チョコレートみたいな焦げ茶色のドアが目の前に見えてきた。
『皇帝陛下はただ今プライベートのお時間をお過ごしでいらっしゃいます。その様な時に特別にあなた方をお招きされたのです。失礼なきようお過ごしなさいませ』
なんて。皇帝陛下付きの侍従が鷹揚におっしゃいました。
(いよいよ、秋人おじさんの……曾孫とお会いするんだ)
否応なしに、緊張が高まっていった。