異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。






皇帝陛下がいらっしゃったのは、和室だった。


い草で編まれた畳と、梁の太い木造の天井。障子に鴨居。


他は全て石造りだったのに、その部屋だけが木の香りで満たされてた。


「やぁ、よく来たね。和」


たぶん、単衣(ひとえ)だと思うけど。着物に詳しくないからよくわからない。 皇帝陛下は紺色のざっくりした生地の和服を着て……畳の上で寝転がってらっしゃいました。


黒髪をツンツンと立てて、浅黒い肌をだいぶ晒してる。顔はかなり整っていて、涼やかな目元と高い鼻はバルドに似てない。瞳は焦げ茶色で、日本人にはよくある色だけど。何だかちょっと陽気な光を帯びてて違和感が。


片手を上げて気軽に挨拶をして下さった皇帝陛下は、抱き枕らしいイルカ方のぬいぐるみを抱きしめてらしてですね……一瞬呆気に取られてしまいましたよ。


寝癖と無精髭を堂々と晒す皇帝陛下なんて、フレンドリー過ぎて……一周回っていろいろ突き抜け過ぎじゃないでしょうか!?


「気にするな。父上はアレがいつものことだ」


バルドは淡々と言うと、一応挨拶のためか膝を折る。あたしも慌ててそれに倣った。

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