異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「父上、ご無沙汰しておりました」

「うん、バルドも久しぶり。しばらく見ないうちに、また一段と厳つくなったね~」


皇帝陛下はボリボリとお尻を掻きながら、バルドにそんなことをのたまう……って。


ちょっと、ちょっと! 幾らなんでもそれはないでしょう。今はプライベートタイムにしても、身内が挨拶している最中なのにお尻を掻くなんて……って、おい! 今、確実に屁をしてくださいましたよね。あ、また!

おおおい! いくら何でも放屁ニ連発はフリーダム過ぎるだろおおお!


とまあ、いろいろ言いたいことは飲み込みまして。内心でツッコムだけに留めた。ピクピクと口元と眉が動いたのは、気のせいです。ええ。


「そう言えばさ~」


やっと皇帝陛下が起き上がった……と思えば。ガリガリ頭を掻いてる上に、鼻に指を突っ込んでるのは見えません! はい、あたしにはちっとも見えませんとも。


ほったナニかを柱にすり付けようとしたとか。もはや相手を宇宙人と思うことにした。ぶおっ… ナニか、音が聴こえてかぐわしいかほりが漂ってますが、ええ。きっと幻聴です。長旅で疲れてるからですよ。

天下のディアン帝国皇帝で秋人おじさんの曾孫が、こんなふざけたオッサ……おじさまだとか。きっと何かの間違いですよね?


ゲッ……プウッゥ~……


ゲップの後に、また放屁こいただとか。


「バルド……この人ホントに皇帝陛下なの?」

「ああ」


念を入れて訊ねてみても、やはり現実は残酷で。このオッサ……おじさまが皇帝陛下なのは動かしがたい事実でした。


そりゃ……ハルトの父上だって亡命したくもなるわ。


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