異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「そういえば、和さんは以前おっしゃってましたよね。帝都にはカレー屋があるって。お昼ごはんついでに行ってみませんか?」
レヤーはいつもの調子でおっしゃいますけど……
「あの……やっぱりあたしは遠慮しようかな」
「ええっ、何でですか!? だって、お話しされた時の和さんはカレー屋を楽しみにしてるって」
ショックを受けたのか、レヤーは両翼で顔を覆ってますけど。
「カレー屋のことじゃないって! あのさ……」
あたしは周囲をひととおり見渡してみる。ちらちら眺めている人、あからさまにじろじろ眺める人。違いはあれど、言えることはただ一つ。
「……あのさ……タキシード着た鳥に乗せられるってのも、何のコスプレかって言いたいんだよね」
3人は余裕で座れる馬より大きな巨鳥がタキシードって……そりゃ珍しいでしょう。その上控えめな格好とはいえ、ドレスを着た女が乗ってりゃ。コスプレどころか何の羞恥プレイって話になるわ!
「そうですか? これくらいいいじゃないですか。むしろこちらの世界で生きる決意をされたなら、顔を憶えていただくチャンスになると思いますけど」
「あんたは無関係だから、そんな無責任なこと言えるけど。あたしには一生ものの問題なんですけどね」
シレッと言いやがったレヤーの憎らしい口を塞ぐべく、あたしはリボンでくちばしをきつく縛って差し上げましたよ。
ギリギリギリギリ
「んごご――!」
「これで、よけいなお喋りはできなくてよかったわね。あ、もちろん食べる時だけ外してあげるから」
我ながら悪魔の笑みでレヤーを見れば、彼は涙目でコクコクと頷いた。