異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
ロゼッタさんはあたしの言葉を聞いて、しばらく物思いに沈んだ顔をしてた。
もしかして、よけいなことを言っちゃったかな?って慌てて口をつぐむ。
彼女にとって、10年前に亡くなった妹さんは特別な家族。他人のあたしが口出ししてよかったのかと反省中、ロゼッタさんはうつむいた顔を上げた。
「……そうだね。ディニも喜んだ。きっと、和以上にはしゃいで大変だよ」
たぶん、ロゼッタさんはあたしに気を遣って合わせてくれたんだ。そうさせて申し訳ない気持ちと、彼女はやっぱり妹が大好きなんだって気持ちで。自然に洋品店に目が行った。
「それじゃあ、お土産になにか服を買おう。あたしも選ぶの手伝うから」
実は、バルドと旅をする前に路銀を稼ぐために売ったお金の残りがまだある。いざというときの為に手付かずでいたから、こういう時に使った方がいいよね。
ロゼッタさんには護衛のお給料としてバルドから幾らか支払われるけど、普段からお世話になってるあたしの感謝の気持ちも贈りたかったんだ。
「え、いいよ。そんなお金ない」
「いいから、いいから! あたしに任せて」
バルドや皇帝陛下につけられた護衛や従者にはきっちり許可をもらい、ロゼッタさんの背中を押して強引に洋品店に入った。