異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



入り口がガラス張りのお陰か、洋品店の店内は明るい。ディスプレイされた服は見たことないデザインだけど、たぶん伝統的な民族衣装をアレンジしたものだ。


お店に入ると、本当に街中にある洋品店と変わらない。マネキンがあって、試着室があって。フックがけの商品がたくさん並んでる。


「ディニさんに似合いそうなものってあります?」


目移りしながら訊いてみれば、ロゼッタさんがまっすぐに目指したのは――民族衣装をアレンジしたコーナー。着物のようなデザインだけど、違いは体に巻き付けて着ること。


「ディニ……白い花も好きだったけど、赤も好きだった。太陽の……生命の色だって」


赤い染めが入ったそれを手にしたロゼッタさんは、じっと見てしみじみと話した。


そして、ロゼッタさんはなぜかそれをあたしの胸に当ててからそっと身体に巻くと、ふわりと笑った。


「やっぱり、和に似合うね。赤は再生と生命を司る色――和が新しい命を宿してるなら、持ってた方がいい」

「ロゼッタさん……」

「和、これわたしからの贈り物。わたしもディニも和に救われたから。どうか受け取って欲しい」


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