異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「地下に眠るもの……?」
ニコラス公爵の話に、引っ掛かりを覚えた。つい最近聞いた話で似たようなことを言われてたような。
(どこで聞いたっけ……旅の途中……バルドの翡翠宮……セイレム王国のどれかだと思うけど)
頼りない記憶を引っ張り出していると、何気なく見た翡翠の腕輪からハッと思い返す。
(そういえば、ユズが言霊の術をかけてくれて……そうだ! 彼女がディアン帝国帝都の地下に、古代兵器が封印されてるって噂があるってのを教えてくれたっけ)
古代兵器について調べようとしても、ディアン帝国では不自然なほどに何も知れなかった。意図的に情報が制限されてるとしか考えられない。
誰かが。古代兵器の存在に気付かれてはまずい誰かが情報を操作してるんじゃないか。そんな疑惑を抱いて、それでもセイレム王国では調べようがなくて頓挫してたけど。
「まさか……ここの地下に眠るって……世界を滅ぼしかけた古代兵器じゃあないですよね?」
恐ろしい可能性を否定しながら、私はニコラス公爵に訊ねてみる。
封印を破るのも動かすのも水瀬の巫女であるあたしの血が必要。それなのに、のこのここんな場所までやって来てしまって。もしも古代兵器が本当にこの地下に封印されているのなら、あたしは離れなきゃいけないのだけど。
「答えは“はい”以外に言い様がありませんよ」
ニコラス公爵の答えとほぼ同時に、翡翠のペンダントが浮き上がり光で何かを描き出す。
そして、それは。
床に浮き上がる紋様となっていた。
「まさか……これが封印の紋様?」