異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
どくん、と古代兵器を中心に葉脈のような光の筋が広がる。
それはまるで生き物のようで――バカらしいかもしれないけど、“大地が生きている”証明のような気がした。
光を目で追うと、その先に繋がりがあると知る。少なくとも光が通じる先への共通項はあった。
フッ……と急にビジョンが消えたかと思うと、今はもとの厨房の景色が広がるのみ。呆然とした私に、公爵は何かをすり下ろしながら言った。
「さ、皆さんのところへお戻りください。せっかくですから体に優しいカレーを召し上がっていらしてくださいね。ここのカレーは薬膳料理でもありますから、お腹のお子さまにもよいものばかりお出しします」
「……それはありがとう……って!」
公爵の発言におかしいと気付いたのは、すぐ。私の懐妊はまだ公表されてないはずだし、お腹だって目立つ週数じゃないのになぜ知っていたんだろう?
少し警戒を滲ませただろう私へ苦笑いをした公爵は、グツグツと煮込む鍋をかき混ぜながらのたまう。
「そんなに警戒をしないでください。少なくとも私は敵ではありませんから」
「敵でない=味方だと言い切れるほど、お気楽なつもりはありませんけど」
「それは、あなたにも言えるんじゃないですか?」
公爵の切り返しに、ハッと皇帝の質問を思い出した。
“なぜ、君はバルドについていったんだい?”
答えを出せないあたしに、皇帝陛下は休息を取れと城の外へ放り投げた。