異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「はい、あなたも」
公爵は小さなお皿にカレーを盛ってくれた。黄金色に近いもったりした色と食欲を刺激する香りに、スプーンを持ってそれらを掬う。
(この香りに色……まさか)
口に入れるのをためらいながら、それでも食べないとって思いきる。スプーンで掬ったものをパクリと食べて――やっぱりと確信を抱いた。
ホロホロと口の中でくずれる大きめのじゃがいも。溶けそうな飴色の甘い玉ねぎ。臭みが一切ない柔らかく甘いにんじん。旨味がギュッと濃縮されて、それでいて固くないお肉。たぶん豚肉だ。
そして、カレーと言えるギリギリの辛さの配合をしたカレースープ。あたしが好きな理想のカレーそのものが、口の中に広がっていった。
「これ……秋人おじさんの……カレーのレシピそのものだ」
懐かしい味にしばらく呆然とした後、たまらなくなってぽつりと漏らした。
おじさんが居なくなってから8年――それだけ長い間食べなかったのに、舌や体はしっかりと記憶をしてた。秋人おじさんがスパイスから配合したオリジナルのカレーを。
市販のレシピやカレールーやカレー粉は一切使わない、おじさんが1から組み立てたレシピなんだから、間違いないし間違えっこない。
あたしはカウンターにいる公爵に向けて疑問をぶつけた。
「これは、もしかしなくても初代皇帝陛下の婿から伝わるレシピじゃありませんか? このお店を作った人物の」