異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
ロゼッタさんとレヤーにはなるべく頑張って速く走り、後続の移動機を引き離してもらう。
そして。
「ロゼッタさん、跳んで!」
あたしの合図に合わせて、ロゼッタさんはダチョウを思いっきり跳ばせた。
渓谷の崖は断崖絶壁。当然、重力に従ってそのまま落ちていく――のだけど。
垂直に落ちていけば、途中で突き出した岩がある。そこに着地して、すぐに向かい側の小さな岩に飛び移る。そして、やや離れた場所に――岩穴があるとレヤーが見つけていたから、そこへ逃げ込んだ。
その岩穴はどうしてかかまくらみたいな形で、後ろに入口となる穴があり、中が空洞になってる。大きさはたぶんレヤーやダチョウが無理して入れるくらい。
素早く岩穴に逃げ込むと、円盤を駆る刺客はそのままこちらへ気づかすに飛び去ったみたいだった。
「もう、いきましたよ」
レヤーの報告で、ほ~ッと息を吐く。相当大雑把なアイデアだったけど、何とかやり過ごせたみたいだ。
「けど、しばらくはここに隠れた方がいいと思います。また引き返してくるとも限りませんし」
「それもそうだね」
あたしはレヤーに寄りかかって腰を下ろし、息をつく。あたしとレヤーだけなら渓谷から出れるけど、ロゼッタさんとダチョウは飛べないから無理だもんね。