異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
古代兵器を動かすには、水瀬の巫女の血が必要。だから唯一残ってるあたしが喚ばれた……けど。
水瀬の巫女だったお母さんはあたしを身籠ったまま、異世界へ――日本へと渡った。それはこの世界とあたしを守るためだと今は知ってる。
けど、お母さんが身籠っていたことを知っていたとして。まだ生まれてもないのに、お腹の子どもが女の子かどうかまでわかるんだろうか?
日本だったらある程度の週数まで行けば、検査でわかるみたいだけど。ディアン帝国ではどうなんだろう?
もしも仮に現代日本の医療水準があったとしても、きっとそれは帝都や都市部限定で。辺境の村で暮らしていたお母さんが受診していたとは考えにくい。
(だけど……セイレム王国の医師は……何の検査もなしにあたしの懐妊を言い当てた。おじいちゃん先生はセリナの主治医も勤めてたというし)
……もしかすると、とあたしは恐ろしい想像に背筋が寒くなるのを感じた。
(……もしかして……この件……セイレム王国も絡んでくるの?)
ゾッとする想像。まさか、そんな馬鹿な。あり得ない……そう思うけど。
セイレム王国で起きた危機――あの夜の大規模な襲撃では、セイレム王国側の人間の協力があったと考えるならば納得できる点がいくつもある。
まず、誰よりも厳重に警備されていたセリナと国王陛下がいともあっさりと誘拐されたこと。国で一番の重要人物なら、一番堅い警備をされていたはず。なのに、信じられないほど簡単に拉致された。
これは、どう考えても内通者や協力者の存在が無ければできない。
それと、首都や水晶宮殿への大規模過ぎる同時襲撃。
他国からあれほどの人間を一度に入国させ、襲撃に参加させるなんてほぼ不可能な人数だった。
ならば、襲撃者はセイレム王国の人間かもしくはやつらを匿う人間がいたということになる。