異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
とすれば……
あたしを狙う連中って、もしかするとかなり厄介な相手!?
ディアン帝国のみならずセイレム王国の中枢部にすら影響を及ぼせるような。
もしもこの2ヶ国だけじゃなく、ユズのいるセイレスティア王国やカイル王子のルーン王国ですらその影響を行き渡らせられるとしたら。
(……いいえ、それ以前にずっと不可解だったのは……アスカ妃があれだけさばけたお方だったのに。巷では彼女が率先して他国へ戦争を仕掛けたという噂がまことしやかに流れてたこと)
アイカさんを娘のように可愛がるのは仕方ないにしても、バルドのことを想わないひとじゃなかった。心底嫌って遠ざけていたように見えない。
彼女は何も話してはくれなかったけど、なんだか深い事情が透けて見えたのはあたしの気のせい?
バルドのお母さんという贔屓目を抜きにしても、彼女はロゼッタさんのように心底の武人で曲がったことが大嫌いという印象を受けた。最初に相対した時は偽った彼女で、本質はまったく違う。
……10年も我が子を避けてきたアスカ妃。その事情が戦争と深く結び付いてる。あたしの中の勘がそう告げてた。
(もしかすると……脅されてたとか? あれだけの力がある連中から我が子(バルド)の命を盾に脅されば、一介の妃では太刀打ちできない)
バルドは一見放って置かれたように見える。
だけど、たぶん。アスカ妃は見えないところで彼を守っていたはずだ。
バルドは幼いころにひとりっきりになったから、自然と自分で生き抜く術を身につけてきた。生きるために、ひたすらまっすぐに。
だから、かな。
あたしがバルドの瞳を見た瞬間――この人ならと思えたのは。